感じた事のないほど冷たくて、生きていることを感じさせる風が雪とともに私の横をすり抜けていった。


今、間違いなく私は生きている。


そして今、確実に私は恋をした。


展開が早すぎるかもしれないし、順序に忠実以前に恋愛反対派の私にとってはおかしいことかも知れない。


だけど恋をした。


自制心どうのこうのは後にして、さっきすり抜けていった風は確実に、私に恋を連れてきた。


かつて私の心を攫っていった人を連れてきた。


だから今…またその続きが始まる。


上総は私の事を知りたいと言った。


初めて上総を直接見た日、上総は私の存在になど気付いていなかっただろう。


気付かなかったかも知れないけど、今気付いてくれた。


それ以上の言葉すら聞けた。


「ありがとう…」


幸せな声が、口からこぼれた。


その声を聞いて、上総はまた笑った。