『今日、忙しかった??』


「ううん、全然…何で仕事の上がりの時間分かったの??」


声がワントーン上がってしまう。


商店街の中を歩きながら、いつもは目もくれない店のショーウィンドウを眺める。


『待ってたから。』


「はっ??」


『だからぁ、店の前で江夏を待ってたの。』


電話の向こうからと背後から、同時に上総の声が聞こえて振り返った。


顔がみるみる内に赤くなる。


世界が突然明るくなる。


上総は、確かにそこにいた。


携帯を耳に当て、笑顔で。


「気づかなかったけ??俺がいたの。」


携帯をポケットにしまって、上総は歩いてきて私の横に並んだ。


「ゴメン…全然気付かなかった。」


その私の言葉にもニコリと笑って、"行こう"と言った。


上総の隣に並んで歩いている今、この瞬間が信じられない。


信じろって言われたって無理だ。


むしろ信じろって方が無理難題を押し付けている。