その日の午後の仕事は楽しさの境地を極めていた。


朝の逃げたい気持ちは何処へ行ったのやら…私の頭の中は上総で埋め尽くされていた。


嫌いな今岡とすら、嘘のように会話が弾む。


早く仕事が終わってほしいと思った。


「お疲れ様でしたぁ!!葛西、上がります」


タイムカードを押して、勢いよく外へ出た。


雪はまだまだ降っているけれど、そんな事気にもならない。


携帯を開けると、メ-ルの受信を表示していた。


「…上総だ」


自然に顔がほころんで、感じていた寒さが消えていく。


「返信しなきゃな…」


そう思って返信ボタンを押そうとした瞬間、携帯電話は着信を表示した。


ディスプレイに表示された名前は


『糸井 上総』


心臓が口から出そうになった。


「もっもしもし!?」


ひっくり返った声で電話を取った。


『あ、江夏??お疲れ様』


電話の向こうから上総の暖かい声がすることに、思わず満面の笑みがこぼれた。


「うん、お疲れ様。」


いつになく女らしい自分が気持ち悪くなるくらいだ。