家に帰っても今日は誰もいなかった。


お母さんは、最近の大雪で中止になって溜まりに溜まった仕事をこなすために、まだ現場にいるのだろう。


弟の和正と妹の有希は、二人ともバスケットのクラブチームに入っているから練習にでも行っているのだろう。


キッチンのテ-ブルに座り、煙草に火をつける。


職場は基本的に禁煙だ。


家に帰ってきてからの煙草が、私に1日の終わりを連れてきてくれる。


鞄の中からCD-Rを取り出して、中を開けてみる。


紫色の下地に、ピンク色の桜の絵が描かれたディスク。


煙草を吸い終えて部屋に戻り、コンポの中にディスクを入れた。


「女の子のバンドっぽぃな…」


そういえば先日、お世辞にも上手いとは言えない女の子5人のバンドがスタジオ入りしていた。


スウェットに着替えながら、音源がかかるのを待つ。


コンポから曲が流れてきた瞬間、私は固まった。


あの女の子たちのバンドじゃない。


地を這うようなベ-スの音、雷のようなギターリフ、男の割に暑苦しさを覚えない澄んだ声のボーカルに、体を突き抜けていくドラムの音。