「…えっ!?」


上総がいる。


何で???


現状が把握出来ないのに、不思議そうな上総の顔でもっと把握出来なくなってしまっている。


「あ…あ…あの…"梓"の…」


言うな。言うな。


言ったら駄目だ。


気持ちの反対、私の口は言葉を発していた。


「"梓"の上総…」


似ているだけにしては似すぎている。


ドッペルゲンガーじゃあるまいし。


「上総さんです…よね??」


ヤバい。心臓が飛び出そうだった。







「あ…はい…そうです」







その返事が返ってきたとき、私の横を風が通り過ぎて行った。


あの冬の日…


初めて私が上総を目にした時に感じた風が、通り過ぎて行った。


そして、私は緊張と驚きと感動で気を失った。


自分でも分からないくらい、一瞬の出来事だった。