「言葉にしないと分からないことがありますから。帆奈美さんにもアドバイスしてもらって」
帆奈美さんの入れ知恵か。
笑声を漏らしたまま俺は体を動かした。彼女を引き寄せてそのまま「圭太! ココロさん!」
「あ、此処にいたのか、二人とも大丈夫か! 二階から落ちたけど……ど……あり?」
俺とココロはバッと離れて、あたふたと一階に下りてきた健太に大丈夫だと誤魔化し笑い。
「もしかして邪魔をした?」
呆然とする健太の疑問に全然していないと俺達は首を振る。何度もなんども首を横に振る。
は……ははっ、そうだよな。
此処はまだ“港倉庫街”だぜ?
敵さんも味方さんもいるんだぜ?
恋人の空気作るにはKYな場所だぜ!
いかんだろ、こういうところでチューなんてしちゃ、なあ? まだ勝敗も決まっていないのに!
結論から言えばキスしていないけれど、空気の読める健太にはもろばれ。気まずそうに目を泳がせ、ゆっくりと彼に背中を向けられる。
「あの、えっと、どうぞ。おれは後ろを向いているんでやることはさっさやっちゃって下さいな」
いっらねぇ、その優しくも余計な気遣い! 寧ろ羞恥を煽るだけだ!
「あうー」ココロは恥ずかしいとばかりに両手で顔を覆い、俺も恥ずかしさのあまりに悶絶。
「終わったか?」
健太の問い掛けには揃って、
「「気遣わないでくれ(下さい)!」」
声音を張ったのだった。