曰くずっとマンションに軟禁、夕方くらいから此処に身柄を移されたとか。


軟禁されている間は、単に一室に閉じ込められるだけ。

一人じゃなかったから何かと乗り切れたのだと彼女は告げてくる。


同じ立場の帆奈美さんに励まされ、良くしてもらったらしい。


だから彼女の身が心配なのだとココロは眉をハの字に下げた。


自分はこの倉庫に拘束だったが、帆奈美さんはきっと五十嵐のところにいる。


両リーダーと深い関わりを持っている彼女だから、勝利のために利用されるのではないかと懸念している。ココロは俺にそう教えてくれた。


そっか、帆奈美さんがココロを。

話を聞く限り、随分とココロの支えになってくれていたみたいだな。


彼女には感謝しても感謝しきれない。


俺はちょっとだけ腕の力を緩めて、ココロの瞳を捉えた。


謝っても謝り切れない気持ちが胸を占める、だけどそれ以上にまずお礼を言わないと。


彼女に言うと決めていたお礼を。


「ココロ、サンキュな。クッキー美味しかった。手紙も受け取った。また作ってくれよな」


すると彼女がポロッと一粒涙を零した。


ココロも本当は怖くて怖くて堪らなかったんだ。

俺の一言で気が抜けたんだろう。

うん、うん、何度も頷いて涙に頬を濡らしながら笑顔を作ってみせる。


「今度は直接手渡します」


彼女はしゃくり上げて再び俺の胸部に顔を埋めた。

今度は優しく抱き締めるよう努めて、彼女の震える体を腕に閉じ込める。


「大丈夫。もう大丈夫」


子供に言い聞かせるように、彼女に大丈夫を繰り返す。


ココロは一句一句に頷いて俺の背中に腕を回すと、ぬくもりを共有するように縋ってきた。


今までの恐怖を払拭するように、ただひたすら縋っていた。

俺も軽く涙目になったけど、敢えて堪えることにする。涙を流すことにカッコ悪さを感じたから。


「ケイさん、私……ケイさんが好きです」


スンスンッと洟を啜り、彼女は顔を上げて一生懸命に気持ちを教えてくれる。


なんで今日はこんなにも気持ちを告げてくれるのか分からないけど、ココロは言葉を重ねて言うんだ。俺が好きだと、大好きだと。


「誰よりもケイさんのことが好きだと言えます。だから古渡さんに迫られたケイさんを見て、すごく嫌な気持ちになりました。
だけどケイさんは拒んでくれました。嬉しかったです。
私、ケイさんを守れる人になりたいと思います。ケイさんは私を守ると言ってくれました。同じように私も――大好きな圭太さんを守りたい。舎弟の彼女として」


改めて決意を口にし、俺の傍にいると言ってくれる。


今日はなんでストレートに物を言ってくれるのかな。

勘弁してくれよ、心臓が爆発するって。顔も火照るんだけど。


ああでも、言葉を返さないなんて男らしくないからさ。


「俺も好きだよ、ココロ。大好きだ」


笑みを作って彼女の右頬に手を添えた。

古渡に引っ叩かれて腫れた頬、ゆっくりと触って、彼女と視線を合わせてお互いに一笑を零す。大好きだよ、俺も。

ココロを人質に取られて、馬鹿みたいに気が動転したほどココロが好きだ。


期待された眼、でもそれ以上に「キスして欲しいです」と言われて、「今日はよく気持ちを口にするなぁ」俺は笑声を漏らす。


彼女は顔を赤らめながらはにかみをみせる。