「これはココロを甚振った分!」
次に身を屈ませて、下から上へ顎を手の平で突く。
「これはハジメの分! そしてっ!」
真正面から腹部に拳を入れる。
グッと息を噛み殺す古渡に一笑し、
「これは私の分!」
崩れる女の体を見据え、弥生は笑みを作った。
パンパンと手を叩き、「立ちなさいよ」腰に手を当てる。
「まだやれるでしょ? 私、ゼンッゼン満足してないんだからね!」
「そーそー。弥生が終わったらうちの分も残っているし?」
ゆらっと弥生と肩を並べるのは、一階フロアにいた響子。
あらかた片付けて上に来たようだ。
「ココロとケイは?」
ざっとフロアを見渡し、響子は二人がいないことに疑念を抱く。
「落ちた」
簡潔に説明し、でも二人ならきっと大丈夫だと弥生は告げた。
まずは目前の女をどうにかしようと響子に言えば、同感だと指の関節を鳴らす。
「女同士、水入らずで喧嘩しよーぜ? ま、卑怯なことはしないさ。サシのタイマンでいこうぜ。先に弥生、行くだろ?」
「当然!」
だってまだ自分が喧嘩中だし。
笑顔に悪意を込めて弥生と響子は古渡を見下ろした。
古渡はというと、完全に血の気を引かせている。
「うーっわ……女の喧嘩ってこわ。男同士の喧嘩よりもえぐい」
遠くで傍観していたイカバはケンに加担しつつ思わずポツリと本音。
「まったくです」
ケンは不良の拳を避けながら、深々と頷いたのだった。