少人数だから一塊に行動した方が得策だろう。

俺達はなるべく逸れないようにしつつ、まずは一階フロアを攻める。


機器の部品らしき袋が多く見られる埃っぽい一階。

袋がタワーのように積み重ねられているけど、こんなところにココロが本当にいるかどうか……ちょっと疑心を抱く。


まさか嘘の情報を流したんじゃ、それもありうる。

なにせ相手は日賀野以上に狡く卑怯で傲慢なヤツだからな。


どんな手を使って襲ってくるか分からないぞ。


しかもイカバと響子さん以外、手腕の無いヤツときた。

俺や健太は数々の喧嘩を乗り越えてはきたものの、そう簡単に手腕アップには繋がっていないしな。


俺なんて戦闘の大半はヨウ達に任せているし。

あくまで俺はチームの“足”として一役買っているだけ。不意打ちに対応できるほどデキたヤツでもない。


緊張で高鳴る鼓動を抑えつつ、俺はしきりに目を配って彼女の姿を探した。


ココロの名前を呼びたいけど敵に所在地を教えることになる。

なるべく息を潜めて行動をしないッ?!!



パチン――突然倉庫の照明が点灯した。



バチバチッと電流の流れる音が頭上から聞こえ、眩しいほどの明かりが俺達を照らし出す。



ま、不味いぞ。

倉庫の光が外に漏れたら向こうの敵に居場所を教えることに……多分協定チームがある程度片付けてはくれていると思うけど、明かりは消さないと不味い!


「いらっしゃ~い」


焦る俺達をまるで嘲笑うかの声が二階から降ってくる。

視線を持ち上げた先にいたのは銀の長髪を一つに縛っている、やたらめったら胸のでかいオンナ。


写真で一度だけ顔を拝見したことのある女の顔、あれは古渡直海じゃないか!


二階から俺達を見下ろす古渡はヤッホーと能天気に手を振って一笑。


目を細めて口角をつり上げる彼女の隣には、


「皆さん!」


誰よりも会いたかった彼女の顔。

会えなかった日々が長くて長くて、彼女の顔を見た瞬間泣きたくなった。


ココロの顔色は悪そうだけど見たところ無事っぽい。


良かった、よかった……でも彼女はガタイの良い不良に腕を拘束されている。


その光景に、俺の感情は一気に沸点まで達した。にゃろう……ココロによくも。


ガンッ、ガッシャン!


刹那、響き渡る袋タワーの崩れる音。


誰がタワーを崩したかってそりゃ彼女を溺愛しているといっても過言じゃない姉分さん。


こめかみに青筋を立てながら、フロンズレットの髪をギュッとヘアゴムで縛ると見下ろしてくるココロに待ってろ喝破。


次いで古渡に覚悟しとけと中指を立て誰よりも早く駆け出した。

物騒な女だと古渡は冷笑し、俺達は俺達で響子さんの後に続く。


すると一階に身を隠していた不良達が飛び出してくる。

率先してイカバ、そして響子さんが敵を相手にして俺達に道を作ってくれた。


「行け! 直ぐに追いつく、頼んだぞ」


響子さんの声を背に受けながら、俺は誰よりも早く階段へと駆けた。


「待てって!」健太や「ケイ!」弥生を置いて、自分でも信じられない速度で走る。


ただただ気持ちが俺を動かすんだ。


三日、正確には二日、彼女と会えなかった。


すぐに助けに行けなかった。

会えなかった間、軟禁されている間、俺達が奔走している間、ココロはナニをしていた? 酷いことされなかったか。ぶたれたりしなかったか。泣いたりしてなかったか。


不安にさせてごめん。すぐに助けに行けなくてごめん。怖いさせてごめん、ごめんココロ。守るって約束したのに――!