曰く、倉庫に手当たり次第侵入して人質を探していたら、シメあげた敵のひとりが人質の場所を白状したとか。

なんと人質二人はばらばらに拘束されているらしい。



「ヤマトさん、帆奈美さんは五十嵐の下です」



顔を顰める健太の言葉に、目を眇める日賀野はそうかと一言。

ということは二人が助けに行くのはココロ……馬鹿、俺には俺の仕事があるだろ。ナニ、身勝手な事を思っているんだ。


軽くかぶりを振って俺は二人にココロのことをよろしく頼むと口を開く。


でも、その前にモトが真顔で俺と日賀野に言った。


「ヤマトさん。これからはオレがケイの代わりにチャリ運転します。
もう作戦目前ですし、土地勘も必要ないでしょ?

必要なのは喧嘩の手腕。
オレ、ケイよりかは喧嘩できる自信ありますから!

それに倉庫の場所はオレ達より地形を叩き込んだケイの方があると思うんで時間のロスも最小限に抑えられます」


え。モト……それってもしかして。


「アンタは山田と行けよ。終わったらこっちに来ればいいじゃん。アンタが来ても足手纏い極まりないだろうけどな」


フンッと鼻を鳴らすモトの、不器用な優しさに俺は瞠目するしかない。

間を置かず日賀野は仕方が無さそうにチャリから降り、健太に降りるよう、次いでモトに運転するよう命令。


「終わったらこっちだ。田山」


助けたからと安心するな、あくまで勝利が目的。

足手纏いでも戦力は多い方がいい。


ココロを救出したら、男手はこっちに回すよう命じ日賀野は運転側に回ったモトの肩を掴んだ。


唖然とする俺は去って行くチャリを呆けた顔で見送っていたのだけれど、ポンッと肩に手を置いてくる健太の一言で我に返った。




「な? ヤマトさんは優しいだろ? 彼女を人質に取られているお前の気持ちは、誰よりも……あの人がよく分かってくれているんだよ」




綻んで目尻を下げてくる健太は、急ごうと俺に促して後ろに乗ってくる。

ジワリジワリ皆の優しさが伝わってきた。

俺は頬を崩して、

「ホント優しいな」

フルボッコというカタチで出逢わなかったら、案外日賀野とは気が合っていたかもな。うん、結構ヨウと似た部分があるんだ。


別の形で出逢っていたら、きっと気が合っていたんじゃないかな、俺達。


俺は日賀野やモト、健太の優しさに感謝しつつペダルを踏んで大きくチャリを旋回させた。


こんな状況でも、皆の優しさにちょっぴし感涙する俺がいた。