「オレの目には七緒先輩しか入ってこねぇ。はっきり言ってお前はアウトオブ眼中」

 と、きっぱり言い切る禄朗。

 ……おい。何か…今のは少ーしイラッときたぞ――、っと。

「ちょっと…お前って何、お前って。昨日は敬語使ってたくせに!あの時七緒の学年・組・名前教えてあげたのも私なのに!」

 ついガキっぽさ丸出しな喧嘩口調になる。

「あぁ、そういやいたな。あの時のダサい女か」

「…ダ……っ!?」

 ださいおんなださいおんなださいおんな………その言葉が頭の中でぐるぐると回る。

「ちょちょちょっとっ!!失礼にもほどがあるだろが!」

「うっせぇなぁーボサボサ頭」

「………!」

 うっわ―――ぁ……。

 なんだこいつ……今、人が1番悩んでいる事を言っちゃったよ……?

 白目気味で震える私に対して、禄朗は何事もなかったかのように会話を続ける。

「なぁっおい、お前七緒先輩と知り合いなんだったら会わせてくれよ!今どこにいるんだ?教室か?なぁなぁなぁ!」

 …マジでブチ切れる5秒前。

「おいボサボサ!!聞いてんのかよ!?」

 ――ぶち。と、ついさっきと同じ音が聞こえた気がした。

 ただし、今度はもっと近い所――自分のこめかみ辺りから。

「うっっさ―――い!!黙れろくろー!!」

「おい平仮名で呼ぶな!!このボサボサが!」

「平仮名で十分だろ!つかボサボサとかゆーな!!私には杉崎心都って立派な名前があんの!」

「ボサボサをボサボサって呼んで何がいけねぇんだよ!!どうでもいいから早く七緒先輩に会わせろ!」

「なんっで私があんたたちの仲人しなきゃいけないわけ!?死んでも嫌だっつーの!!」

「んだよ性格悪りぃな!!」

「いやあんたにだけは言われたくないから!!」


「…何してんの?」

 と、デッドヒートの最中、場違いすぎるのん気な声をあげたのは。

「な、ななななななお!」
「七多すぎだから驚きすぎだから」

 顔に似合わず意外と鋭い突っ込みを繰り出す、「争いの根源」こと東七緒だった。