「…っ何すんだいきなり!」

 と、頭を擦りながら七緒が怒鳴った相手はもちろん、たった今自分の息子に強烈すぎる鉄拳をかましたその女性。

「学校帰りに女の子の家に上がり込んで新婚気分inキッチンってか。あたしはそんなふしだらな子に育てた覚えはないよ七!」

「はぁ!?意味わかんな…」

「エロガキのうえに女装趣味か!こりゃアイタタだな。七、お母さんは悲しい」

 七緒は苦悶の表情で、自分が身に付けているエプロンを見た。

「こ、これは事情が……っ」

…えっと、とりあえず。

「こんばんは明美さん」

「あぁ心都、しばらく見ないうちに垢抜けて!あんた大丈夫?あのエロガキに何かされなかった?」

 背中まである赤茶の髪をなびかせ、東明美さん――つまり七緒のお母さん――は私を抱き締めた。

「ごめんなーうちのエロ息子が!」

「大丈夫だよ何もされてないし」

 昔からこういうノリの明美さんが相手だからこそ、こんな話題でもいちいち赤面したり慌てふためく事なく笑って反応できる。――少なくとも、私は。

「さっきから人の事エロガキだのエロ息子って、その呼び方やめろっつーの!!」

 あらぬ誤解をかけられてしまった七緒は、そう簡単に冷静にはなれないようだ。

「だいたい何で杉崎家にいるんだよ!」