「だってスカート好きじゃないんだもん……」

 うなだれる私に美里がぴしゃりと言い放った。

「そんなんだからずっと幼馴染みから発展しないのよ。制服の七緒君とジャージの心都、遠くから見ててもすっごい変な組み合わせだったわ」

「マ、マジ?」

「マジよ。もっとこう、女らしさをアピールしなきゃ! っていうか、とりあえず一刻も早く着替えてきなさいよ」

「はぁい……」

 普段は砂糖菓子みたいに可愛い美里だけど、こういう時の彼女には逆らえない。

 私は制服を抱えてしぶしぶ更衣室へ向かった。

 廊下の窓に映る自分を見る。

 今日は何をやっても寝癖が直らなかった。頑張ったのに。肩まである髪の毛先が、一部ぴょこっとはねている。

「……そりゃあ、なれるもんなら私だって」

 可愛くなりたい。七緒がメロメロのドキドキになっちゃうくらいに。

 でもやっぱり七緒を見るたび、あぁこいつにはかなわないよなぁ、と思ってしまう。









 恋をすると女の子は可愛くなるらしい。

 嘘だ、と思う。

 大体、自分より恋の相手の方が何倍も可愛いなんて! ……どうしたらいいのよ。

 ──そう。最近、真面目に思う。

 この長い片思いの本当の問題点は、可愛すぎる七緒でも、多すぎるライバルでもなく。

 可愛くなれないこの私、なのだ。