しかし、

「今だよ今。ついてきて」

ものすごい威圧感を放つ黒岩先輩の誘いを断れるはずもなく、私は泣きたいような気持ちで歩きだした。

もしかして呼び出しの舞台には黒岩先輩の仲間がヤバそーな雰囲気で待ち構えていて、複数で私の事シメるつもりなのかも…。嫌な想像がむくむく膨らむ。

しかし意外にも、着いた裏庭には誰もいなかった。

1対1だ。

「ここならゆーっくり話せるっしょ」

微笑みながらくるりと振り返った黒岩先輩の目は、間違いなく笑っていなかった。改めて、恐い。

「――何をですか?」

苦し紛れにすっとぼけてみたらそれが先輩の神経を逆撫でしてしまったらしい。

「ばっくれんなよ。昨日の事に決まってんだろ」

「…ですよね」

「あんたさぁ」

先輩がずばり切り出した。

「東君の事、好きなんでしょ?」

「え?」

「ただの幼馴染みとか言って超バレバレ。だから昨日も飛び出して邪魔してたんじゃん」

「違います!…本当に、幼馴染みです」

「ふぅーん」

先輩の鋭い目が気持ちを見透かすように私を睨んだ。何となく、逸らす事ができない。

「じゃあこれからは邪魔しないでよ。昨日は断られたけど、あたしまだまだ諦めるつもりないんで」

少しだけ、胸がざわっと波立った。

「それは…それは、また昨日みたいにゴーインな手段に出たりするって事ですか」

「まぁ時と場合によっては」

魅惑の笑みを浮かべる黒岩先輩。

波立ちは止まらない。それどころか、どんどん大きく広がっていく。

このボンッキュッボーン、本気だ。