七緒はしばらく言いにくそうな顔をして、そして意を決したように、

「ゴメンナサイ」

 勢いよく頭を下げた。

 全身の力がへなへな〜っと抜ける。

 美里が私に、一安心ね、と目配せ。

 うん、とりあえずは安心だ。

「えーっ何でェ!?」

 黒岩先輩は腕を上下にバタバタして叫んだ。

 悲しんでるっていうより、少し強い口調で。

 七緒は困った顔をして、

「俺、今は部活が一番楽しいんです。だから誰とも付き合う気はないっていうか……とにかく、すいません」

 もう1度謝った。

 おしっ、さすが柔道バカ。

 小さくガッツポーズをした後、何かが心に引っ掛かった。

ん? 今、誰とも付き合う気はないって言ったよな。これって喜んじゃいけないんじゃあ……。

 しばしの沈黙。

 居心地悪そうな七緒と、何だか髪の毛が邪魔で表情が見えない黒岩先輩。