「何よあいつ、結構本気にしてんじゃない……」

 呟く私の脇腹を美里が小突いて、静かにと促した。

 七緒は緊張のためか少し顔を硬くしながらしゃきしゃき歩いて来て、私達のいる植え込みより3、4メートル離れた所で止まった。ナイス。あそこなら声もよく聞こえるし、見つかる心配も少ない。

 ごめん七緒、この悪い幼馴染みを許して。こんな私に惚れられたあなたはきっと不幸だね。ひたすら謝罪の言葉を念じながら息を殺した。

 七緒はきょろきょろと辺りを見回した。そして差出人がまだ来ていないとわかると、側の木に寄り掛かって軽く溜め息をつく。





 心臓が止まるかと思った。

 その七緒の顔を見た瞬間。

 何ていうか、いつもと違う――全く知らない表情だったから。

 瞳には迷いのない強い力があって、でもどこか気怠そうで、少し大人っぽくも見える、その表情。遠くを見つめるその表情。

 上手く言い表わせないけど、14年間の中で1度も見た事がない七緒の顔だった。


 驚きも束の間、

「東く〜んっ」

 と、辺りに響く甲高い声。

 いよいよか!?

 私は声の方向を凝視する。