「ありがとうございますっ。感激っス!」

「…あ、そだ禄朗。これだけは言っとく」

 僅かに真剣になった七緒の口調に、禄朗の背筋がピンと伸びた。

「お前昨日の3時間目もなんか暴れてたろ」

「はいっ担任の橋本を殴ろうとしてましたっ!」

 元気よく答えるなよ。つーかまた橋本かい。

 私は心の中で突っ込みつつ、2人のやりとりに耳を傾けた。

 七緒は禄朗の目を見据え、静かに言う。

「むやみやたらに誰かを殴ったり、まわりのモンに当たり散らしたり、そーいうのはもうやめとけ。何の解決にもなんねぇって判ってんなら、尚更」

「は、はいっ!わかったっス!」

――これだったんだ。1つ謎が解けたよ、七緒。

昨日、禄朗の喧嘩を止めた時に言った「判ってるんだろ」。こういう事だったんだね。

と、唐突に。七緒が私の方を向く。

今まで階段の隅っこでしょぼくれながら2人を見守っていた私の方を、だ。

「ちょっとかっこつけていー?」

「――は?なんで私に聞くの」

 七緒は禄朗に向き直り、

「俺がかっこつけんのにはあいつの許可が必要なんだよ」

 大真面目に言った。