腕時計を見つめた私は、アッ…と短く呟くと、少し早めに走ることにした。


自転車の若者に気を取られていて、パートの時間、ギリギリになってしまったのだ。

「いけない…このままじゃ、遅刻だわ」


パタパタと走っていると、私より前の方の少し離れた場所に、背広姿の男性が歩いているのが見えた。


太陽の逆光のせいで、顔はよく見えなかったが、私は気にすることもなく足を早める。


すると、すれ違い様に、私は足を止めて叫んでいた。



「修也さん!?」



背広姿を着た男性は、その声に足を止めると、不思議そうな表情で私を見つめた…。

その顔は、まさしく修也さんだった。


私は、パートのことを、すっかり忘れて…男性の傍に近づくと、彼の腕を掴んでいた。


「修也さん……」


近くで見る顔も、やはり修也さん、ソックリだ。


頭では、修也さんは亡くなっていると分かっているのに、この思いを抑えることが出来ずにいた。