「お母さーん!いってきまーす♪」


テーブルに置いてあった珈琲を、一気に飲み干すと、慌ててリビングを走り出しながら、娘の夏美は玄関へと向かった。


「いってらっしゃい…忘れ物はないわよね?」


「……あ、忘れてた!」


くるりと方向転換すると、自分の部屋まで走って行く、夏美の後ろ姿を見つめて、クスクスと静かに笑った。


もう、そそっかしいんだから。


「じゃあ…今度こそ、いってきまーす」


「いってらっしゃい…気をつけてね」

「はぁ〜い」
夏美は片手を挙げて、軽く手を振ってみせた。