電車から降りた隆志は、外の気温の暑さに顔をしかめた
「暑っ…」
隆志の地元は、北陸の方で、比較的涼しい方だったが、今年はそうでもなかった
駅から家まで20分は歩かないといけない
実家は少し山地になっている場所にある
周りは田んぼや畑ばっかりという村で、人口も少ない
だが隣町は人口が多いので、流れ込んで人がやってくるということもある
隆志は田んぼの間を通り抜け、懐かしい家の外壁をしばらく見つめた
外壁は木でできており、結構大きい家だ
「ただいま」
家の引き戸の扉を開けると、「おかえり」と母親の恵子が迎えた
「あら、痩せたわね。仕事、忙しいの?」とお茶を出してきた
「まぁな」
隆志の家は純和風で、中も広い
ほとんどの部屋には畳が敷いてある
縁側もあり、小さな庭の池に鯉が住んでいる
隆志は仏間に行き、仏壇の祖母の前にしばらく座っていた
仏間から外に出るとすぐ「隆兄ぃっ!!」と言って高校生ぐらいの少女が隆志の首に抱きついた
「おかえりー!」と、笑顔で隆志に話しかける
「おー香澄。大きくなったな」
「もう18だもん!」
香澄の後から、隆志の妹・智恵と最近生まれたという息子・雄馬が出てきた
この家は結構複雑な家庭で、三世帯の家族が住んでいる
まず、隆志の父、母
そして隆志の妹とその夫と、子供
そして母の弟とその娘の香澄が住んでいる
少し前までは隆志と香澄の祖母も住んでいた
「智恵。その子が、雄馬?」
隆志が立ち上がり、雄馬に近づいた
「そうよ」と智恵は雄馬を隆志に渡した
「初めまして。お前の伯父だぞ。…可愛いな」と隆志は思わず頬がほころんだ
「あんたの小さい頃にそっくりでしょ」と恵子が台所の方から言った
「俺はもうちょいイケメンだっただろ。てか俺ももうオジサンか」
「兄貴も早く結婚したら?」
「見合い写真持ってきてるよ」
「やめてくれよ」