「お姉ちゃん、外は夜になろうとしているのに、
まだあの空気が残っている。
ギナマはどこだろう。」
昼食を食べた後、
あの鎧武者の事を話し…
少しの時間は経っているだろうが、
気が付けば外は完全に陽が暮れようとしている。
孝史の言葉には
ギナマを案じる心がはっきり見える。
「知らない。でも、やっぱりおかしいわ。
お昼を食べたところなのにもう6時よ。
そんなに時間が経ったとは思えないのに… 」
二人は外の様子を窺いながら
家を出る機会を狙っていた。
ギナマに会えれば、泊めてくれた礼を言い、
挨拶をして別れるつもりだが、
このまま会えなくても
不思議な空気が消えれば出かけようと考えていた。
空気だから、いつかは元に戻るだろう。
その時だった。
いきなり慌しい足音が
ギナマの部屋辺りから聞こえてきた。
ギナマの部屋…
はっきり見たことはなかったが、
それはギナマが初日に教えた方向の事だ。
好奇心旺盛な子供のはずだったが、
かおるは勿論、
孝史も何故か今まで覗こうとは思わなかった。
「お姉ちゃん、行ってみようよ。
ギナマの足音とは違うけど泥棒のようでもないよ。」
「そうね。あんな足音が聞こえたと言う事は、
他の誰かが居るってことね。
行って見ましょう。」
その部屋は難なく見つかった。
一つの部屋から、廊下の明かりとは異なる
明るい光が漏れていたからだ。
そしてそこから、
時代劇に出ているような着物を着た女の人が
動揺した様子で出てきた。
見つかっても、ただ泊めてもらったお礼を言えば良いだけのはずだったが、
無意識に、
2人は慌てて廊下の陰に隠れた。