「すごーい。いつの間に作ってくれたのだろう。
昼もこんなにご馳走だ。」



一番先にダイニングに足を踏み入れた孝史が、
興奮した声を出している。

確かにテーブルの上にはいろいろな料理が置かれ、
その中のいくらかはまだ温かかった。

自分たちが庭に出ている間に
誰かが来て、作ってくれたのだろう。

やはりチラッと見た人影はその人だったのだ。

今度見た時にはきちんと挨拶しなくては、
と思いながらかおるも手を伸ばしている。


昼食後、蔵にあった遊具箱の中に
サッカーボールを見つけた孝史、

したことがない、と言うギナマに
サッカーの初歩を教えながら、

家の建物と川が流れている間の庭、

普通なら芝か植木で整地されていそうなものだが、

幸いにも何も植わっていない広い庭地で、
2人はボールをけって遊んでいる。

最近は、弟と言えども、
孝史と一緒に遊んだ事のないかおるは、
観客になる、と言って
適当な石に腰を降ろしている。


その2人… 背丈の違いはあっても、
かおるの目には、

同じような子供が
無心になってボールを追いかけているように見えた。

母が入院して以来、
下校すれば病院へ通っていたが、

元々毎日サッカーに親しんでいた
11歳の孝史の動きは、

水を得た魚のように楽しげで、
おまけに機敏だ。

それに比べて、
16歳という割には動きの不安定なギナマ、

その動きはシャープさに欠ける。


しかし色白の顔に
柔らかそうな髪をなびかせて、

しなやかに動くそのギナマの様子は、

まさに華麗な舞を見ているように感じられた。