「お姉ちゃん、自分が何を言っているのか分かっているのか。

あいつがギナマだって… 
まだ4歳の子供だぞ。

赤ちゃんの時からここで育っていたのだぞ。
確かに顔や雰囲気もそっくりだけど、
まだ4歳だぞ。

僕たちは2日前の夜までギナマと話をしていたと言う事を忘れたのか。

16歳と言う年齢は確かかどうか分からないけど、

背は姉ちゃんより高かった。

そのギナマが、どうしてここにいる4歳の鳶人になるんだよ。

お姉ちゃんは話をしたと言うけど、

あの鳶、銀杏丸だってあの時、確かに庭にいた。

僕たちはあいつが眠っているのを確かめるように

ちょっかいを出したりしていたから間違いは無い。

あいつ、鳶人を見て嬉しそうに近寄って来た。

絶対にお姉ちゃんのところになど行っていないよ。」



かおるが昨夜起こった事を話すと、
孝史はとても信じられないらしく、

興奮した顔をして、
玄関先で鳶の銀杏丸と戯れている鳶人の動きを見入っている。



「でも、ギナマには不思議なチャクラがあって、

あの家の周りも結界を作っていたでしょ。

それを考えれば時間のコントロールも… 

あ、でもそれはギナマのお父さん、
実鳶と言う人がしたらしいわ。

私が話したのも彼よ。」



チャクラとか結界と言う様な言葉なら、

孝史もはっきり思い出すだろうと思ったが… 



「だってその人は自害したと聞いたじゃないか。

ギナマが形見の刀を見せてくれた。
忘れちゃったのか。」



孝史は自分の目で見た事だけを、

そう、自分の夢に出たギナマだけを信じているらしく、

かおるの話に入るのは難しいようだ。


確かにあの家にいる間、
午前中の数時間は歴史本を読んでいたが、

11歳の孝史が、鎌倉時代云々をどこまで把握したのかさえも疑問だった。

かおるでもはっきりしないところがかなりあった。