俺はまず最初に、この体に慣れるために色々な事にチャレンジし始めた。最初はしり込みしていた俺だが、ゼウスが言っていた『運命』をようやく受け入れる決心がついたのだ。
 四つ足歩行の練習はもちろん、ジャンプやサイドステップ云々もやってみた。


 体を慣れさせるために行った全行程を通して言えることは、この体は非常に軽く、柔らかいということだ。人間の体では出来なかったこと、やれなかったことも簡単に出来てしまう。とくに脚力、動体視力は凄まじく、慣れるまで時間がかかってしまった程だ。しかし猫になって、人間で出来たことがほぼ出来なくなってしまうので、プラスかマイナスかの判定で言えば、マイナス判定なのが残念なところ。




――そろそろ体に慣れたし、外に出てみるか……?



 自分にそう問ってみる。もちろん答えはイエスだ。逸早く自分を従えてくれる主を探して『浄化戦』に参加しなくてはならない。そして宝石を6つ集めなくてはならないのだ。




「よし、行くか。換気のために窓開けといて良かったな」



 部屋の換気のために窓は開けておいたのが役にたった。猫の手では窓の鍵を開錠して、窓を開くのは不可能だろう。


 俺はネックレスを口にくわえて窓枠までジャンプした。
 既に夜の闇は深く街を包んでいるが、猫の俺にはそんなこと関係ない。僅かな光しかなくても確り視界を確保できるのだ。




「凄いな、猫の目は」



 人間の時には体験出来なかったことの数々。その数々は俺の不安な気持ちを払拭し、躍らせてくれた。