オレの腕の中にはマナミがいた。
小さくて、細くて、人形のような顔…。
抱いているのに逆に抱かれているかのような錯覚を覚える摩訶不思議な体…。

オレの冷めた体を温め、凍りついた心も一部融解させた最初で最後の存在だった。
しかし、それはあくまで一部であり、芯まで溶かすことは出来なかった…。

「タカシの目って、どんなときもいつもおんなじだよね」
「そうか?」
「うん…。いつも動かないっていうかどこ見てるかわからない感じっていうのかな。上手く言えないけど…」

よくわからなかった…
考えたこともなかった…
いつからそうなったのか?物心ついたときから?元々そうだったのか、それともある時期を境にそうなったのか?

基本的に相手の目を見るのはたとえ心を許している人間でもあまり好きではなかった。

マナミはそれとは対照的にオレを凝視する傾向があったので、気になったのかもしれない。