「タカシ、だよね?」

ちょうど森永製菓のビルで仕事上がりの一服ならぬ一杯としてコーヒー牛乳を飲んでいたところだった。

いつもはすぐ帰るのだが、今回は偶然そういう気分だった。

カオリは基本的に変わっていなかった。

よくありがちな付き合ったり、別れたりで別人のように雰囲気が変わることはなかった。

強いて挙げるなら、表情に少し影が出ているくらいだった。

オレと別れたことが直接の原因なのかはわからないが…。

「ああ、久しぶり…」

カオリはまだやり直したいと思っているのだろうか?

「相変わらずだね…」

一瞬笑顔が見えた気がしたが、すぐに消えた。

「ん?ああ、そうだな…」

その言葉の真意が図りかねた。

考えすぎか…。

「…」

カオリが何か言いかけたように見えた。

「とりあえず、元気そうで良かった…。じゃあ、またね…」

基本的にカオリは思っていることをなかなか言おうとしないところがあった。

今回もご多分に漏れずだったが…。

そして、どういうわけかオレの心にも言い様のないざわめきが発生していた。

もう1度やり直したいということだろうか?
それとも、単なる肉欲だろうか?

すぐに答えは出せなかった。そもそも出す必要性がないかもしれないが…。