「…なんで、いつも歌ってるの?」 そう聞くと、また彼は切ない表情になった。 「…気づいてもらうためだよ」 … あ… 駄目だ。 彼にこんな顔をさせちゃ。 笑って欲しい、悲しそうな顔をしないで。 なぜか、そう思う。 この人は、すぐに壊れてしまいそうに笑う。 まるで、あたしのお母さんみたいに… あたしは、それ以上何も聞かなかった。 聞けなかったんだ――