「あ、もういかなきゃ」
「もー行くん?」
「あ・・・はい。知り合いのお見舞いで・・・」

どくんっ

「そか・・・また来ぃや?」
「はい、ありがとうございました」

ぺこりと頭を下げて、翔君は病室を出た。

「紗優もくる?木村さんの・・・」
「え!?・・・あたしはいいやっ!今日早く帰らないといけないし・・・」
「そう・・・また一緒に行こうね?」
「う・・ん。じゃあ、ばいばい」

ばいばいと、手を振ってから翔君は木村さんの元へと向かった。



「紗優?」
「ごめんね・・・おじいちゃん、あたしも帰る」

おじいちゃんが、また何か言っていた気がしたけど、あたしの耳には入らず、急いで病院を出た。




なんとなく、一人になりたかった。


「・・・っ」

どーしても、翔君が木村さんの名を呼ぶばかり、悲しくなってしまう。


あたしは帰ることなく、しばらく中庭のベンチに座っていた。