「しょう・・・くん?」

ゆっくりと翔君は、その病室に向かって行く。


行かないでなんて言えない。

あたしにそんな権利、ないんだ・・・


あたしの目からは、何故か涙がこぼれる。




人だかりも収まって、静かになった時、翔君はその病室に入って行った・・・


「木村・・・さん」


消えそうなくらい、優しい翔君の声。

初めて聞く、彼女の名前。

「おはよう」


と、静かに聞こえる、あたしの知らない声。


あたしの見たくなかった世界。