「・・・俺、小さい頃から病気で、よくこの病院に入院してたんだ」
「うん・・・」

ぽつりぽつりと、翔君が語りだしてくれる。


「それで、中1の時、病気が悪化して、普段よりも長い入院をしてる時期があったんだ。・・・その時、一人の看護婦さんに出会った・・・」


次々に、翔君の過去があたしの頭に入ってくる。

翔君の顔は何だかつらそうで、聞かなきゃよかったって後悔した。


ごめんね・・・翔君・・・


「その看護婦さんとは凄く仲良くなって、退屈な入院生活も凄く楽しかった。・・・それで、俺は知らないうちに・・その人のこと・・好きになってたんだ・・・」


ズキン――

胸が痛い


翔君は、本当にその人の事を想っていたんだろうなって思うほど、本当に愛おしそうな顔をした。


「その人、馬鹿でね?いっつも失敗ばかりで、先輩に怒られてばっかりだった。・・・でも、一度も逃げたりしなかった。この仕事が大好きな人だったから・・・」


「・・・うん」


泣きそうだ。


こんなにも苦しいものなんだ。

きっとまだ君はその人の事、想っているんだね・・・

どれだけ今、君が愛おしそうな顔をしているって気づいてないでしょ・・・

苦しいよ・・・


「俺は俺で、そんな彼女を見るのが好きだった。俺は歌うのが好きだったから、よく彼女にも聞いてもらってた。彼女は俺の声が好きだと言ってくれた。だから、俺は嬉しくて、毎日彼女が来るたび歌ってた。彼女も歌が好きだったから。」


彼女のために歌ってた・・・


「それから、入院生活も悪くないって思うようになった。・・・でもやっぱり無理だった。毎日苦しくなったり、吐き気がしたり・・・毎日泣いて泣いて・・・今は良くなってるんだけどね?・・・あの時の俺はほんとに弱かった・・・」


翔君は、今度は今にも泣きそうな顔をしている。



「死にたい・・・って思ってたんだ、俺。・・・こんな苦しい人生なんて、楽しくない、生きてる意味ないって・・・」


「翔君・・・」





「俺、自殺しようとしたんだ」




――――!!!!