「~♪…」
また、声が聞こえる
「♪~…♪」
優しくて、綺麗で…
「…♪」
でもどこか、悲しげで…
いつも、おじいちゃんの病室から聞こえる、この優しい歌声。
「おじいちゃーん…誰なんだろーねーコレ?」
あたしは、ベッドに横になって外を眺めているおじいちゃんに、なんとなくそぅ言ってみた。
「あぁ…そうやねぇ…」
「誰なんだろうねぇ…」
いつも聞こえる、窓の外から風と共に入ってくる、この優しい歌声…
気になる、凄く気になる。
「気になるんやったら、見ておいで…?」
「えッ」
おじいちゃんはいつも、急に唐突なことを言う。
そんなところは昔から変わらない。
「いきなり…そんな…」
「でも気になるんやろぉ?」
「…う…うん」
最近、どんどんこの声に惹かれ始めた。
何故だか分からない。
誰かも分からないのに、この声を知りたくなる。
「行っておいで?」
「…う…うん…じゃ、…ちょっと行ってくる。すぐ戻ってくる!ちょっと見てくるだけだから!!」
「はいはい…」