「櫻井っ・・・待て!・・・北川先生」
追いかけようとした柳先生を止めたのは、北川先生だった。
「柳先生、あの生徒に同情したい気持ちはわかりますが、現実的に考えてあなたがあの生徒の保護者になることは常識ではないことです」
「・・・」
「もっとご自分の立場を理解して行動をー・・・」
「今の状態の櫻井を一人にする方が、私にとっては理解しがたいことです」
「柳先生!」
「北川先生は、死にたいと言った生徒を一人にさせるのですか!?」
柳先生の切羽詰まった声が、廊下に響いた。
「死に・・・」
「私にはそっちの方が教師として、理解しがたい行動だと思いますが」
「本当に・・・本人がそう言ったのですか?」
「顔色一つ変えずに言いました。だから、私はー・・・」
「だったら、ますます貴方をあの生徒の元に行かせるわけには行きません」
「!?」
「もしあの生徒が自殺でもしたら、世間は原因を探るでしょう。貴方があの生徒と関わっていたら、それが問題視される可能性が高い。そしたら、この学校の評判や他の先生方にも迷惑がかかってしまう」
「・・・」
「柳先生も教師を続けることができなくなってしまいますよ。それでも、いいんですか?」
「・・・北川先生がお考えになってるのは、櫻井のことではなく世間体なんですね」
「生徒と深く関わるにはそれだけのリスクがー・・・」
「では、死にたいと言った生徒を放置した責任は私たちにはないのですか?あぁ・・・もし最悪の場合になったときは、 ゙把握していませんでした。報告はありませんでした。学校には何の責任もありません ゙って言えばいいんですもんね」
「柳先生!」
「関わっていたとしても、そう言えばいいじゃないですか?姉さんときみたいにー・・・」
「これ以上そういうことを仰るなら、校長に報告しますよ!?」
「どうぞ。リスク負わなきゃ生徒は守れませんから」
「・・・っ、待ちなさい!柳先生!」
北川先生の怒鳴り声が廊下に響く。
「はぁ・・・」
櫻井、どこに行ったんだ!?