いつも冷静な龍司が初めて見せた戸惑う姿に俺と由岐は、その場から動けなかった。

「あいつ…皐にめちゃくちゃ執着してるんだな…」
「……」

知らなかった…。あいつがあんなに感情を露にするぐらい俺を大事にしていたなんて…。だけど…それは…きっと…あれが原因なのかもしれない…

「…皐?いいのか?」
「ああ。今は、1人でいたいだろうしな。それより先生のとこに急ごうぜ?」
「あっ、ああ。」

俺は、由岐と一緒に職員室へと急いだ。




皐たちから逃げるように走り出した俺は、1人、屋上にいた。

「…なんで…あんなこと…」

壁に寄りかかりながら座り1人呟いた。自分にも何故、あんなことを口走ってしまったのかわからなかった。

「くそっ!由岐が…あんなこと聞いてくるから…」

俺自身もわかっていた。いつかは、皐と別々の道を歩んでいくこと…

「…俺は、皐から離れたくない…」

空を見上げ皐のことを考える。

「俺は…不安なのかもしれないな…あいつと離れることが…」

その思いの強さの原因は、わかっていた。皐の親父さんがいなくなってからだ…

「…俺があいつをずっと守るってあの時、強く思ったんだ。」

俺は、目を閉じてもう一度自分の心と向き合った。そして、ゆっくりと開け立ち上がり

「俺は、自分の気持ちを消したりしない。」

屋上から出て皐たちの所へ走った。