「おーい、下柳…」



呼ばれてる。呼ばれてるけど気付かない振り。



「お母様おみえになってるぞー」



現実逃避したい。今この時から逃げ出したい。



「ノート届けに来てるけど…」
「ルーズリーフあるので、いらないです。」



教室から笑いが溢れる。この瞬間がすごく恥ずかしい。



「下柳─」



先生の叫ぶ声も止まる。そろそろ諦めてくれる頃合いだろう。



僕も安心してルーズリーフを手に取る。



席を立とうとした時、



「下柳くん、これ。お母さんが。」



天使のような純粋な笑顔の彼女が、視界に入ってしまった。