『着いたぞ?』


マンションの地下駐車場に着いてエンジンをきってもなお腕をどかない矢耶。


『…………?どーした?』


自分のメットを離し首だけを少し後ろに向けた。

顔を俺の背中につけてぎゅっとしがみついたまま。


『矢耶~?』

「まだこのままで居たい」

『…………っ…………』


なんだよ。

んなこと言うな。

もうちょっとで家なんだから。


『矢耶。部屋でぎゅっとしよ?これじゃぁ矢耶の顔見れないだろ?』

「分かったよー」


パッと腕を離しメットを外そうとした手を掴んだ。


『俺が外すっていつも言ってんだろー?』

「別に自分でできるよ?」

『いいんだよ。俺がするって言ってんだから。ほらよ。外れた』

「ん――まぁいいけど。とりあえずありがとっ」


何から何まで俺がする。

これは昔から。




矢耶をバイクから降ろした。

すると矢耶は走ってエレベーターの方に行った。


『あっおい。矢耶?!』


突然すぎて離れていく矢耶の腕を掴み損ねた。


「藍~早く―――!!先に行っちゃうよ―――?」


エレベーターのドアが開き中で"開"のボタンを押しながら聞いてくる。

おぃおぃ。

それはないだろ。

置いて行くとか…


『待てって』


少し小走りでエレベーターのとこに向かう。


「藍遅いよ~」


3、2、1、、、とかカウントダウンを始めるから焦る。

0!!と言う声と同時に中に入り込んだ。


「間に合ったね!」


何でそんな急ぐ必要があるんだよ。