『じゃぁ、あいちゃんお願いします。岸田さん、60分コースです。いってらっしゃい!』

『はい。いってまいります。』

美波も接客を時間内にこなせるようになってきた。
美波があいとして働くホテルヘルスは、契約したホテルの部屋に入った瞬間にタイムが入るシステムだ。

小沢に感謝しなければいけないのは、入客する度に変な客や泥酔した客がいない事だ。
いわゆる良客ばかりであいにも指名がとれるようになってきた。
まだオープンしたてで客足は乏しいものの、三ヶ月で大分コンパニオンも客も増えた。

美波は働いて初めて仕事の大変さと、お客が求めているのが性欲だけではない事を知った。

今日入った岸田もそうだ。
年は五十で、離婚した後も慰謝料を奥さんに送りながら、たまに来てはただあたしの体に触るだけだ。
嫌がる事は一切しないし、あたしが岸田にプレイする事すら必要としない。

『あいちゃん、ありがとう。俺はこうやって抱き合ってるだけで本当に嬉しいよ。』

もちろんガツガツしている若い男の子はたくさんいる。
若い男の子も、彼氏だって、今のあたしにはいらない。