『前に…進んでるよ』


僕はこの言葉に少し悲しくなった。
百合を応援するって言ったのはいいけれど、僕には少し複雑だったんだ。


『そっか』


『鈴木君は?』


『俺? 俺も少しずつ進んでる』


『良かった…』



~♪


百合の携帯が鳴る。
聞こえるのは失恋ソングだ。


『安里君だ…私行くね』

『道分かる?』


『うん、大丈夫』


『気を付けてね』


『ありがとう、バイバイ』


百合は安里の元へ帰って行った。
僕は引き止める事の出来ない弱虫だから。



~♪


僕の携帯が鳴る。
あみからだった。


『あみ…ごめん』


『心配したよ~どうかしたの?』


『知ってる人だと思ったら違う人だった』


『びっくりしたよ。いきなり走るから』


『ごめんね?一人にして』


大丈夫だよ!ねぇ…優?』


『何?』



『優は一人で抱え込みすぎだよ…』


『うん…そうかもね』


『優…私に言ってよ。私優の力になりたい…』


…ドーン



花火の音が鳴る。

何かが終わりを告げるかのように。
でも僕の答えははっきりしていたんだ。


僕は百合が好き。
あみには断った。


もう迷わない。


迷う訳ないんだ。



でもこの先、僕の道は迷路になる。


出口が見付からない迷路へと。