───…僕は歩からある話を聞いた。

『何か~沙紀が言ってたけど、安里って百合と付き合ってるらしい…』


『…そうなんだ』

『安里が告ったんだって』

『ふ~ん…俺には関係ないし』


僕の気持ちが曇る。そうだったんだ…


百合は今安里と付き合ってたんだ…
百合はあの時安里を見つめていたんだ…


僕じゃなかった。
でも僕は安里を恨んだりはしなかった。


安里は友達として良い奴だし、安里といて楽しいから。
僕は安里に知らないふりをしていた。



もうすぐ夏休みになろうとしていた。
僕は帰る時見てしまった。
安里と百合を。
安里と百合は手を繋いで帰っていた。
百合は楽しそうに笑っていた。


昔、僕と百合が一緒に帰っていた道を、今度は僕と変わり安里と一緒に帰る。
ただ安里になっただけなのに、こんなに苦しい。


何だろう…この気持ち。

このモヤモヤした気持ち。


これって…ヤキモチ。

僕は昔和樹にやいていたヤキモチが、今は安里にやいている。


まだ僕は百合を忘れていないんだ。


百合との思い出は、もう昔の事だけど、今もはっきり思い出せる。

まだ僕の中は百合でいっぱいなんだ。