『どうする?』


『家には上げんな。俺が行く。』


僕は家の外に行った。
そこには百合が寒そうに待っていた。



『…………何か用?』


街の気温のように、冷たく、言い放つ。
寒い言葉は、百合の耳にも届いただろう。



『…久しぶりだね…今日優君の誕生日だからさ…そのプレゼントを持ってきたの』



『……いらない』


『…もらって?』

震えた手で、ラッピングされたものを差し出す百合。


『中身何?』


『香水なんだけど…』


『もらってもいいけど、俺つけないよ』



僕はこう言えば百合は諦めると思ったんだ。



『それでもいいから…優君に似合うと思って買ったの…だからもらって』




それでもいい?
百合はそれでもいいの?

百合…僕を想わないで。

百合…僕に関わらないで…



僕は声を振り絞り、百合に言った。

次第に冷たくなっていく、手。
僕たちの、関係みたいだ。


『百合…お願いだから…この香水は違うやつにあげて』



百合の目から涙が流れていく。



『私…優君にもらって欲しい…』




『俺は受け取れない…百合を忘れたいから。
こんなことされても困るだけだよ』



僕はこう言い捨てて、勢いよくドアを開け、家の中に入っていった。



僕は百合を…受け止めれないから。