『…百合…百合…』
呼んでも、呼んでも、僕の声は儚く消える。
百合の死というのを、受け入れなくちゃいけないのに、受け入れたくない自分がいる。
幸が昨日言っていたように、百合は僕の中にいる。
そう思いたいのに、無理なんだ。
僕は朝食を済ませ、
制服を着て、百合の葬式会場に向かった。
今日の空は、雲ひとつなく、綺麗な青空だった。
そこに二羽の鳥が楽しそうに飛んでいる。
僕は羨ましそうにその鳥たちを見上げた。
───・・・・
葬式会場に近付くにつれ、黒い服の人や、制服姿の人が見え始める。
受付を済ませ、
中に入ると、お経の声やすすり泣く声が聞こえた。
僕が会場に入ると、同じ学校の生徒達が、僕に振り向く。
そして、可哀想な目で僕を見るんだ。
僕は自分の席に向かう。
僕の席は歩の隣。
僕は歩の隣に座った。
『…優』
歩は少しだけ驚いた口調で僕の名を呼んだ。
『……うん』
『来ないかと思った』
『今日で百合と最後だから…』
僕は遺影に視線を向ける。
その遺影は、
僕達が一番最初に行った時の水族館の写真だった。
あの時撮った写真だった。
百合の笑顔は、輝いていた。
あの携帯の写真と同じ笑顔をしていた。
ねぇ…百合・・・
僕は君の、笑顔の引き出しを、開けれたかな…