世界が狂いだした。



『どういう事…だよ!!
なんで百合の遺体…ないんだよ…どれだけ俺を苦しめればいいんだよ………』


さらに強まる風。
そのスピードは変わらない。

僕の中を壊していくこの世界のスピードも変わらなかった。



『優…百合ちゃんは…海の中で眠っているの…』



『嘘だ…俺は信じない』



僕は勢いよくリビングから出ていった。
そして部屋にまた戻った。
テレビを消して、電気も消して、僕はひとりになった。
でもひとりになっても、涙は止まらない。



僕は携帯を開け、フォルダを開けた。


そこには、3ヶ月前に撮った、百合がいた。


水族館でのツーショット。二人ともいい笑顔をしていた。



『…やっと見れた…百合の笑顔…』




写真の中の百合は、すごく可愛くて、可愛くて…抱きしめたくなる。



でも…百合はもういない…



そんな現実が嫌で僕は泣くんだ。



百合との思い出が、この携帯に残されている。


『優…?』


するとドアの向こうから幸の声が聞こえた。



『…………』


僕は布団の中で息を潜めた。


『入ってもいい?』



『…………』


―ガチャ…



幸が部屋に入ってきた。



『優…』


幸は僕が隠れているベットの方へと近づいてくる。



『へへ…ダサいよな。こんな俺が泣くなんて』



『…ううん…』