僕は遅い足取りで家に向かう。
―ガチャ…
『…た…だいま…』
『優!!どこに行っていたの!?』
母さんが心配した口調で話す。
『…考えてた…』
僕は下を向き、か弱い声で言った。
『そう・・お葬式には…でれる?』
僕は首を縦に振って、自分の部屋に一目散に走った。
部屋につくと気持ちを紛らわすため、テレビをつけた。
テレビはどれもあの事故の事ばかりだ。
『びっくりですね』
『エンジンの燃焼という事でこのような大惨事となってしまったわけですが、もっと早く気付かなかったのでしょうか?』
ニュースキャスターが険悪な面持ちで話している。
僕はただ見ているだけで、精一杯だった。
でもある人の話で、僕は暗くて深い世界に堕ちていくんだ。
『え~今回の事故で生存者はいないと情報が入ったわけなのですが、遺体の方も分からないという事なんですね』
遺体が分からない?
遺体が見付からないって事…?
僕は部屋から飛び出し、リビングに向かった。
ちょうどリビングのテレビには、その事故のニュースが流れていた。
『母さん…百合の遺体…ないの?』
『……墜落したとこがちょうど海だったらしいのよ…飛行機全体焼かれちゃってね、遺体が…分からないらしいのよ…』
『じゃあ百合は今どこにいるか分からないって事!?』
僕の叫び声がリビングを包む。
外は強い風が吹いていた。
『えぇ…』
静かに母さんが僕に質問に答えた。
世界が狂いだす。