僕と百合の距離は30センチから、もうなくなっていた。
僕は百合を抱き締めているから。
泣いている百合を優しく抱いた。
『百合…俺達…すごく遠回りしちゃったね?』
『…う…ん…』
『でもね?遠回りしなきゃ、俺は誰を好きか…誰を愛してるか分からなかったよ?俺はその事に気付かせてくれた人に感謝しなくちゃいけない…』
『そう…だね…』
『感謝してもしきれないよ…ナナにはホント感謝しているんだ…俺に背中を押してくれた歩…それから、俺のホントの気持ちを教えてくれた…安里。もっともっといる…』
『私も…感謝しなくちゃね…?こうしてまた優君の腕の中に包まれて…嬉しい…』
『百合…もうはなさないよ…もう逃げないから…俺についてきてくれる?』
『当たり前だよ…』
『百合…ありがとう…』
僕は百合をゆっくりと離した。
百合の顔がよく見えるように。
百合の顔を焼き付けるように。
そして僕は笑ってみせた。
それを見た百合は僕をみて笑う。
こんな愛しい時間が、
少しずつ過ぎていく。
百合?
僕は…
君の涙が一番綺麗だと思うんだ。