―日曜日…
僕は朝早くナナの家に向かった。
今日はナナの引っ越しの日だ。
──…ピーンポーン
『はぁ~い』
『おはよ、ナナ』
『優おはよ!!あがって?』
ナナの部屋は段ボール箱が山積みになっていた。
『結構片付いた?』
『うん、大体片付いたよ~』
『引っ越しのトラックは?まだ?』
『もうすぐ来るんじゃないかな?座ってて?』
『うん~』
僕はソファーに座り、テレビを付けた。
テレビの上にはまだ修学旅行の写真が飾ってある。
僕はその写真が視界に入らないように、視線をずらす。
『優?』
『ん?どうした?』
『今日はつけてないの?』
『何を?』
『何をって……香水…』
今日は香水をつけて来なかった。
ただ忘れた訳じゃないんだ。
一日だけでもいいから、最悪の誕生日を忘れたかった。
百合から初めてもらった香水の匂いを僕から取りたかった。
そうしないと、また思い出してしまうから。
『…忘れたんだ…朝忙しくて…』
『そう…なんだ…ごめんね?変な事聞いて…』
ナナは悲しい瞳を僕に見せた。