僕の動揺は隠し切れない程だった。
…気が付けばもう12時を回ろうとしていた。
ナナとの初めてのクリスマス。
でも僕の心は暗く覆われていた。
ナナと話していても、百合の事を考えてしまう。
ナナと寝ている時も、百合を考えてしまう。
ごめんね…ナナ…
僕は君と寝ている時に、初めて違う人を考えてしまった。
すると僕の目から一滴のしょっぱい水が落ちた。
その水がナナの頬に落ちた。
『優?どうしたの?』
『ううん…何でもない。ただ涙が出てきちゃった』
『優は泣き虫ね』
僕はナナの胸に顔を埋めた。
この夜、僕は最大の罪を犯した。
…聞こえてくるのは、雀の元気な鳴き声。
朝、目が覚めたら、横にはナナがいなかった。
『…ナナ?』
ナナはキッチンに立ち、朝食を作っていた。
『あっおはよう。ぐっすり寝れた?』
『うん。よく寝れた』
『今、朝食出来るから待っててね』
『うん…ありがと』
僕は顔を洗い、ナナが作った朝食を食べた。
ナナは僕に笑顔を見せて話してくれる。
それにつられて僕も笑う。
でも心からは笑っていなかった。
どこかに引っ掛かる部分があったんだ。
ナナ…僕は君に何度も謝っても許してはくれないよね。
僕は君を幸せにできる力がなかったんだ。
僕の心はもう、蝕まれていた。
あの紅い月に。