──パチン…パチン…
教室に聞えるのはホチキスの音だけ。
ただそれだけ…
『鈴木君は,あの相沢さんとメールするの?』
──パチン…パチン…
『小林に関係ない…だろ』
今思えばヒドイ事を言ってしまった。
百合の顔を見てみた。
百合は僕の事を見ていた。
百合の瞳が昼休みと同じように、潤っていた。
この時は気付かなかった。
百合が僕と同じヤキモチでいっぱいという事を…
僕は逃げだしたかった。
僕の体はヤキモチで埋めつくされていく…
『小林、男子の方終わったから、俺帰る』
『え?』
『男子のは先に先生に出して来るから、小林は後から出しに行けよ』
『………うん』
『じゃあな』
僕はカバンを待って、教室から出て行った。
『バイバイ』
百合の声が耳に残る。
百合ごめん…
一人にしてごめん…
僕がまだ弱虫でガキだから…
僕は君を連れ出せない…
君を和樹から横取りできない…
ごめん…
『失礼します』
僕は先生に提出するため、職員室に入っていった。
『あら鈴木君!!…小林さんは?』
『まだやってるみたいなんで。これ男子の分です 』
『ありがとう。分かったわ。気を付けて帰るのよ?』
『はい…さようなら』
『失礼しました』
今日は楽しくなかったな。
百合は何であんな事を聞いたのだろう。
そして百合は和樹の話を楽しそうにした。
そんな百合も許せなかった。
世界が自分の思い通りになればいいのに…
そう思ったんだ…