『百合どこに行ってたの?』
こう、沙紀に聞かれていた。
でも百合は、
『んーちょっとね』とはぐらかして、席へと着いた。
僕は知っている。
百合がどこに行っていたとか、誰と喋っていたとか。
──…昼からの授業は部活登録だけだ。
まだどこに入部するか決まっていない。
帰宅部にしたいけれど、一年生は強制なんだ。
めんどくさ…
『優は何にする?』
歩が部活登録の紙を持って、振り返る。
『俺ー俺中学やってたバスケかな』
シャーペンの芯をカチカチと出し、バスケ部の欄に丸を打った。
『優バスケやったんだ!?似合うな~』
『何だそれ。歩は??』
『実は俺もバスケ!』
『一緒やん』
『優とは気が合いますなー』
『そうだな!水島さんは?』
『沙紀ー?沙紀は調理部だってさ』
『あーそれっぽい』
『あいつ料理好きだからなぁ~ 優耳かして』
歩が僕の耳に口を当てる。
『何だよ?』
『小林さんはテニス部だって!!』
『だから何?』
『何だよーもっと喜べし』
『ごめんな?』
歩、ホントは喜んでいた。
ただ顔に出さなかっただけ。
ありがと、歩。
これでひとつだけ百合の事を知れた気がするよ。
でもまだまだ百合の全てを知るのは時間がかかりそうだな…
『あっ学級委員の鈴木君と小林さん!!今日残ってやって欲しい事があるの』
すると先生が僕と百合の方を見て言ってきた。
『はっ?何で?』
『いいじゃない!今日教室に残ってね』
僕は仕方なく、『はぁーい』と返事をした。
百合も『分かりました』と返事をしていた。
今日僕は百合と二人きりになる…
それが嬉しくてたまらなかったんだ。
でも現実はそんな甘くなかった…