―パタパタ…


百合は教室を出て行ってしまった。

百合の足音だけが、耳に残る。


『百合…』

沙紀が心配そうに百合の名前を呼ぶ。

『俺…のせい?』


『優のせいか?分からん…』


『俺ちょっと行ってくる』


『おっおうー』


僕は勢いよく教室を出た。
百合の後を追った。

百合はどこだ?

見つからない…

1年5組の前で百合を見つけた。


良かった―………


……和樹?

百合と喋っているのは、和樹じゃないのか?

まだ昨日メールしたばかりなのに、もう喋れるようになったんだ…


またイライラしだした。


あの感じ…


あのヤキモチが………

僕を襲った。


僕はその光景を見ていられなかった。


楽しそうに話す和樹と、それを聞いて笑う百合をこの世界から消したかった―…



これがヤキモチ…


嫌なものだな…



『優ー百合見つかった?』


僕は暗いオーラを出して、教室に戻った。


『…俺…』

『あ?』



『俺、あの子にメールするよ!!!』



『は?百合はどうするんだよ!!』



『小林は…諦めた』

僕は机の木目を見て、偽りの気持ちを言った。


『鈴木君ホントに言ってるの?』


『うん…メールくらい良くない?って思って』


『そうだな…』


『小林の事は諦めた訳じゃない…でも今は…』


『今何かあんの?』


『今は言えない…』


『じゃあ言える時になったら言えよ?』

『悪いな』



すると、さっきと同じ足音を出して、百合が教室に戻って来た。