『お兄ちゃん…私頑張る…私頑張るから…今日は思いっきり泣いてもいいよね?』
『あぁ…』
そして私は兄の胸の中で小さい子供に戻ったように泣いた。
兄も私と一緒に泣いてくれた。
私にはまだ兄がいる。
二人で歩いていこうとしたんだ。
私はどれくらい泣いただろう。
泣いても泣いても、何か物足りない。
泣いても泣いても、両親は戻ってこない。
でも人間は必ずお腹が空く。
『…ナナ?お腹減らない?』
『うん…減った…』
目を赤くして私は言う。
『リビング…行こっか』
私達はリビングに向かった。
テーブルにお母さんのご飯が置いてあった。
ラップに包まれて。
そこには置き手紙が添えてあった。
《今日夕方お父さんを空港まで送って行きます。もしかしたら夕飯に間に合わないかもしれないから、温めて食べてね》
今日のメニューはハンバーグ。
私と兄の大好物だった。
『…母さんと父さんは空港に行く途中事故にあったんだね…』
『…うん』
『母さん…最後の最後まで俺達に優しかったよな』
涙がこみあげる。
『…今日が母さんの最後の夕飯だな…』
『私…お母さんとお父さん…大好きだったよ』
『俺もだよ』
涙が再び流れる。
『ナナ?今は俺がいるから、安心して?』
兄がとてもたくましい。
兄の言葉で安心できた。
でも私にはまだまだ試練が残されていた。