『由香っ!』



私は血に染まった由香の手を掴んだ。



と、同時に智也が車から出された。



大人達の声が飛ぶ。



「おい!担架だ担架!!」


「早くしろ!!」






救急車に乗り込んだ。



救急車の人達が智也の手当てをする。


由香の手と私の足も手当てしようとしてたけど断った。



『智也の手当てを先に』



「智也~…智也~……嫌だぁ死なないで…」



由香は智也の手を握ってた。





「このお兄さんの血液型と生年月日とご家族の連絡先が分かるなら教えてもらえる?」



多分、救急車の人は由香に聞いたんだと思う。


でも由香の耳には届かない。



代わりに私が答えた。





ガツッ




その時、乱暴に物を置く様な音に驚いた。




「どうしたんだ!?」


救急車の運転手が怒鳴る。



乱暴に置いた物は電話の受話器。

乱暴に戻した音。




「満室で…どこも…」



と、首を横に振る。



「はぁ。またか…。」